女性研究者紹介

光受容タンパク質の反応機構・生理機能

2014-2019:名古屋工業大学 研究員

KONNO Masae

生命・応用化学科 生命・物質化学分野
研究キーワード:微生物型ロドプシン 光受容 イオン輸送 遺伝子発現解析

研究の概要

微生物型ロドプシンは、膜に局在し、内部に結合したall-trans型レチナールにより光を受容することができるタンパク質です。このタンパク質は古細菌・真正細菌・真菌類・藻類といった、幅広い生物種に分布する普遍的な光受容タンパク質で、光駆動イオンポンプ・光駆動イオンチャネル・光センサー・光駆動型酵素といった機能を持つことが各種分光法や電気生理学的手法により明らかにされてきました。分子機能解明を目的とした基礎研究で明らかにされたこれらの性質は、生体反応を光で制御する「光遺伝学(オプトジェネティクス)」技術として、脳機能解明などへの応用も進められています。
私は、公共データベースの配列情報を基にした遺伝子の探索や、生体内での遺伝子発現解析によって見いだされる微生物型ロドプシンについて、分子機能の解明を進めています。また、生体内での発現パターンの解析を通じて、自然界における微生物型ロドプシンの役割を明らかにするための研究を行っています。

カリウムおよびセシウムを輸送する光駆動ポンプの創成

微生物型ロドプシンは、膜に局在し、内部に結合したall-trans型レチナールにより光を受容することができるタンパク質です。このタンパク質は古細菌・真正細菌・真菌類・藻類といった、幅広い生物種に分布する普遍的な光受容タンパク質で、光駆動イオンポンプ・光駆動イオンチャネル・光センサー・光駆動型酵素といった機能を持つことが各種分光法や電気生理学的手法により明らかにされてきました。分子機能解明を目的とした基礎研究で明らかにされたこれらの性質は、生体反応を光で制御する「光遺伝学(オプトジェネティクス)」技術として、脳機能解明などへの応用も進められています。
私は、公共データベースの配列情報を基にした遺伝子の探索や、生体内での遺伝子発現解析によって見いだされる微生物型ロドプシンについて、分子機能の解明を進めています。また、生体内での発現パターンの解析を通じて、自然界における微生物型ロドプシンの役割を明らかにするための研究を行っています。

海洋性真核藻類Guillardia thetaがもつ光駆動カチオンチャネルGtCCR4の光反応解析

古細菌のプロトンポンプロドプシンで高く保存されているDTDモチーフは、外向きプロトンポンプを特徴づけるアミノ酸配列と考えられてきました。私達は海洋性真核藻類Guillardia thetaから単離されたDTDモチーフを持つ新奇ロドプシンが、カチオンチャネルとして機能することを見出しました(DTD-CCR)。既知のCCRとDTD-CCRはアミノ酸配列の特徴が大きく異なることから、この分子の輸送メカニズムを明らかにするため、我々はDTD-CCRであるGtCCR4について、分光測定による反応過程の解析を行いました。低温赤外分光測定による初期中間体の構造変化の測定から、既知のCCRであるChR2と比較してレチナール異性化によるタンパク質骨格の構造変化が小さく、DTDモチーフを持つプロトンポンプであるBRの特徴にむしろ近いものであることがわかりました。また、過渡吸収測定による光反応中間体の解析結果を電気生理学的解析で求めたチャネル閉鎖の時定数と比較し、M中間体の減衰時にチャネルが閉じることがわかりました(図)。この特徴は、O中間体の減衰時にチャネルが閉鎖するChR2とは異なる特徴です。GtCCR4のM中間体はレチナールシッフ塩基(RSB)が脱プロトン化している中間体であり、RSBのプロトン化状態がDTD-CCRにおけるチャネルの開閉に重要であると考えられます。

共同研究希望分野

微生物学・神経科学・植物生理学

プロフィール

1998年 東京理科大学理工学部応用生物科学科 卒業
2000年 東京理科大学大学院理工学研究科応用生物科学専攻 修士課程 修了
2006年 東京理科大学大学院理工学研究科応用生物科学専攻 博士後期課程 単位取得退学
2007年 東京理科大学大学院 理工学研究科 応用生物科学専攻にて 博士(理学)取得
2008年 東京理科大学理工学部応用生物科学科・ポストドクトラル研究員
2009年 東京理科大学理工学部応用生物科学科・助教
2011年 独立行政法人農業生物資源研究所・特別研究員
2014年 名古屋工業大学大学院工学研究科・博士研究員
現在に至る 生物物理学会・植物生理学会・植物学会 各会員

2019年 東京大学物性研究所特任研究員・さきがけ研究者

業績

  1. Yamauchi Y, Konno M, Ito S, Tsunoda SP, Inoue K, Kandori H. Molecular properties of a DTD channelrhodopsin from Guillardia theta. Biophys. Physicobiol. 14, 57-66, 2017
  2. Konno M, Kato Y, Kato HE, Inoue K, Nureki O, Kandori H. Mutant of a light-driven sodium ion pump can transport cesium ions. J. Phys. Chem. Lett., 7, 51-55, 2016.
  3. Inoue K, Konno M, Abe-Yoshizumi R, Kandori H. The role of the NDQ motif in sodium-pumping rhodopsins. Angew. Chem., 127, 11698-11701, 2015.
  4. Kato HE, Inoue K, Abe-Yoshizumi R, Kato Y, Ono H, Konno M, Hososhima S, Ishizuka T, Hoque MR, Kunitomo H, Ito J, Yoshizawa S, Yamashita K, Takemoto M, Nishizawa T, Taniguchi R, Kogure K, Maturana AD, Iino Y, Yawo H, Ishitani R, Kandori H, Nureki O. Structural basis for Na+ transport mechanism by a light-driven Na+ pump. Nature 521, 48-53, 2015.